COLUMN

No.13 音声感情解析を用いたソリューション2 ~保険テクノロジーに革新をもたらす音声感情解析~

ソリューション

はじめに

金融業界で金融テクノロジー(Fintech)が注目を浴びるようになってから久しいですが、次に注目される分野は保険業界のInsurtech(インシュアテック)であると言われています。
これは世界中で急速に発展している分野で、音声感情解析テクノロジーもこの分野で大きな貢献をしており、本コラムでは保険業界で音声感情解析テクノロジーが使われている事例をご紹介致します。

保険金詐欺への対策

インシュアテックは、保険業界にテクノロジーを導入して、事務の効率化や顧客サービスの向上を図るものです。
これらの目的の中で、保険業界で特に重要なのが保険金詐欺(Insurance Fraud)に対する対策です。
個人的な詐欺から組織的プロによる詐欺までさまざまあります。
先日、筆者が住む地区の中堅病院が診療報酬の不正請求を理由に国の機関である厚生局から保険医療機関の取り消し処分を受けました。
これも一種の詐欺行為です。
また世間を騒がせたビッグモーター事件も詐欺行為と言えるでしょう。
自動車事故を偽装して保険金を不正に請求する詐欺事件も時々ニュースになります。

保険機関や保険会社は長年これらの不正請求対策に悩まされてきました。
不正請求の検出精度を高める為には、審査要員の増員、ビッグデータシステムやAIシステムの導入など、かなりの投資をする必要があります。
しかし公共の保険機関では予算はそれほどあるわけでは無く、民間保険会社も収益を考えるとなかなか保険金詐欺防止の為に大型投資に踏み切れないのが現状です。

そこで朗報です。
大規模で高価なシステムを導入する必要はありません。
音声感情解析テクノロジーを導入して、リーゾナブルな投資の範囲で保険金詐欺の検出をしてはいかがでしょうか?
職員や社員のパソコンにアプリをインストール程度の投資額で、詐欺検出の確率を格段に高めることができます。

詐欺検出における声の重要性

Psychophysiological Phenomenon(精神生理現象)と言う言葉を御存じでしょうか?
これは心理的な要因が生理的な反応や身体機能に影響を与える現象のことを指します。
例えば嘘をつく時のストレスや、嘘がばれないかと不安を感じた時には、自分の意志とは無関係に不随意的な身体的反応が現われます。
例えば心拍数が上がる、血圧が上がる、発汗する、声の調子がいつもと違ったりします。
ここで大事なのは不随意と言うことです。
これは自分の意志ではコントロールできない身体反応のことを形容する言葉です。
詐欺の時には必ず嘘をつきストレスや不安感情が発生します。
これらが声に微妙な変化をもたらします。
例えば、発声周波数が変わる、発声間隔の時間が変化する、音声波形がフラットになったり急峻になったりします。
音声感情解析テクノロジーはこれらの声の微妙な変化を検出して、保険詐欺を働いている確率が高い保険請求者を検出してアラームを出します。
声は身近な身体反応で、他の身体反応、血圧や発汗など、に比べて測定が比較的容易であり、かつ精神生理現象の反応に関する情報を多く含んでいます。
従って、詐欺検出においては声を解析することが重要になります。

画期的な音声感情解析ソリューションAppTone

しかし、賢明な読者は次のように思うかもしれません。
「最近は保険会社や保険機関のホームページに請求事項を入力すれば保険請求ができるので、声を出す場面が無いよ。だから音声感情解析はそもそも使われないんじゃないの?」
そうなんです。
特に詐欺をする側からみれば声を出して保険会社の係員と話すのは避けたいところですよね。
そこで当社の提携先であるEmotion Logic社は簡単ではあるが画期的なアイディアを思いつきました。
それがAppToneです。
日本では日々のコミュニケーション手段としてLINEが普及しています。
最近は市役所などの公的機関からの連絡や手続きもLINEを使い始めました。
日本以外の、特に欧米圏ではWhatAppと言うアプリが相当普及しておりメッセージ通信、ビデオ通信、音声通話が行えます。
そこで、AppToneでは、保険請求があった請求者にシステムからWhatAppで電話をかけ、申請された保険請求の内容を自動音声で聞くようにしています。
その回答音声は録音され、直ちに音声感情解析ソフトで声を分析し不正保険請求の確率を計算します。
この計算値が閾値を越えた場合にはアラームを出し、システムが人間の保険審査担当者の介入を要求します。
この仕組みにより、声を使わざるを得ない環境を作り、声による感情解析が行われ、保険金不正請求検出の確率を高めます。
またこの確率が低い請求は速やかに次の手続きに進めば良いことになります。
これは保険会社や機関にとっては従来よりも精度の高い情報の下で意思決定できることになりますし、正当な保険金請求者側にとっては保険金請求手続きが従来よりもスムーズに行われることを意味します。

コンペティションで一位を獲得

このテクノロジーを開発したEmotion Logic社は今年(2024年)9月にイスラエルの保険テクノロジースタートアップ競技(InsurTech Israel startup competition)で一位を獲得しました。
この業界で長年保険金請求手続き事務に従事してきた専門家に言わせるとこのテクノロジーはまさに「ゲームチェンジャー」だとのことです。

終わりに

欧米や南米では保険テクノロジーの一環として音声感情認識が徐々に保険機関に採用され始めました。
日本ではまだ普及が遅れていますが、近い将来保険請求処理の標準になる可能性を秘めています。
ご興味のある方は是非当社にご相談下さい。

音声感情解析AI「ALICe」とは