はじめに
前2回のコラムでは感情労働について説明しましたが、今回はそれに付随してストレスについて調べてみました。
そうするとストレス関連で驚くべき巨額の費用がかかっていることが世界保健機構(WHO)のデータから読み取れました。
今回のコラムでは「低ストレス社会への変革」に向けて、感情解析テクノロジーを用いてストレス発見を迅速に行う方法をご提案したいと思います。
ストレス社会の実態
世界保健機関(WHO)2024年9月の報告によると、うつ病や不安神経症が原因で年間120億日もの労働時間が失われており、その生産性の損失は1兆ドル(約150兆円)もの巨額な額にのぼるといわれています。
スイスの保険専門家であるMirela Dimofte氏によると、これに関連して、米国だけでも1,900億ドル(約22兆円相当)という驚くべき医療費に繋がっているとのことです。
日本において、うつ病や不安障害によって毎年失われている具体的な労働日数に関する公的な統計データは見当たりませんでしたが、厚生労働省の「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は53.3%と報告されています。
驚くべき数字です。日本の半数以上の労働者がストレスの中で仕事をしているのです。
これは生産性の低下を引き起こし、医療費を増加させ、場合によっては寿命を縮めることに繋がりかねません。
これにより、保険業界では保険金の支払いが増加することにより収益が悪化することが大きな問題になっています。
わが国ではここ数年、OECD諸国の中で生産性が低く、これを克服するために官民をあげてDX(Digital Transformation)の取り組みが推奨されてきましたが、これに加えて「低ストレス社会への変革」が大々的に必要になると思われます。
低ストレス社会への変革
この変革を進めるためにWHOは「職場における精神的健康ガイドライン(2022年)」を発行し、精神的健康の増進と精神疾患の予防に向けたエビデンスベースの推奨を提示しています。
ここで大事なことは、ストレスを主観的な感覚だけでなく、数値や客観的指標として捉えると言うことです。
この為に、次のような生理的指標が用いられることが多いようです。
- 血圧変化
- 心拍変動(HRV)
- 皮膚電気活動(EDA)
- 体温・手の温度
- 呼吸パターン
- 表情変化
etc
これらをウェアラブル機器やAIを用いた機器を利用して、ストレスを測定する試みがなされています。
しかし、これらのデータを収集する為にはある程度の医療的知識が必要ですし、それなりの測定機器も必要です。
音声感情解析によるストレス検出
当社の提携先で、イスラエルの音声感情解析テクノロジーを提供しているEmotionLogic社の保険不正申告防止ソリューションのエキスパートであるMauro.N氏はビジネス用SNS LinkedInの中で次のように述べています。
「職場でのストレスは、間違いなく私たちの時代の最も差し迫った課題の1つです。
EmotionLogicでは、ストレスが実際に存在する場合に、その存在と根本原因を特定するために設計されたソリューションを提供しています。
科学に裏打ちされた正確な洞察を雇用主に提供することで、雇用主は情報に基づいた行動を取り、問題に対処し、従業員が職場のストレスを克服するのを支援することができます。」
そこで、EmotionLogic社の親会社であるNemesysco社のホームページにあるホワイトペーパー「LVA and the Emotion Logic HUB – White paper – 2023」を調べると音声感情解析テクノロジーLVAでは、ストレスの程度を話者の音声を解析することにより次の7つのストレスレベルを検出することができ、ストレスの早期発見に役立たせることができると記載されています。
「ストレスなし」
臨床的なストレスが検出されない状態
「ストレス低」
低レベルのストレスが検出されたが、アラートを出す程の程度ではない状態
「一時的ストレス(低)」
時々、比較的高いレベルのストレスが検出されるが、認知ストレスは低く、アラートを出すまでのことは無い状態
「一時的ストレス(中)」
しばしば比較的高いレベルのストレスが検出されるが、認知ストレスは低く、まだアラートを出さなくても良いと思える状態
「警告レベルストレス(中)」
システムは時々高レベルのストレスを検出し、被験者が適切にリラックスすることができない状態:何らかのアクションを取るタイミング
「警告レベルストレス(高)」
システムは非常に高い頻度で高ストレスを検出し、被験者が適切にリラックスすることができない状態:これは非常に高いストレスレベルの状態で適切に処置をする必要がある
「危険レベルストレス」
システムが危険レベルのストレスを検出し、何らかの症状を示す直前の状態:直ちにストレスを取り去るアクションを取る必要がある
これらのストレスレベルの測定は、単に話者の音声をパソコンに接続したマイクで拾い、音声感情解析ソフトに入力するだけですから、特別な装置は必要なく、医療的な知識も必要ありません。
非常に手軽にストレスレベルを測定することができます。
これを用いれば「低ストレス社会への変革」に大きく貢献できると思います。
ご興味のある方は是非当社にお問合せ下さい。
次回のコラムでは、上記で引用したホワイトペーパーの内容を少し詳しくご紹介する予定です。