COLUMN

No.9 音声と感情についてPart3 ~ビジネスシーンへの応用~

テクノロジー

はじめに

Part1~Part2のコラムで音声から感情をどのように抽出するかの原理はおわかりいただけたと思います。当社の提供するソリューションALICeは話者の感情状態を2秒毎に抽出して表示することが可能です。
しかし、これをビジネスに適応できなければ単なる学術研究で終わってしまいます。
世の中の多くの感情解析システムは感情状態の表出までは何とかできるのですが、どのようにビジネスに適応してそのビジネスに役立てるかに関しては、多くをユーザーの試行錯誤に任しているのが実情です。
そこで、ALICeは様々なビジネスシーンで感情解析の結果をどのように使うべきかについて、アドバイスを出力する機能を具備しました。
積極的にAIを活用したこの機能により、ビジネスにおける感情解析の活用が一気に進んでいきます。
この機能を組み込んだ感情解析ソリューションを提供しているのは、国内では当社だけであると自負しております。

対象となる人の声を収集し、それをLVAテクノロジーで感情要素を2秒毎に抽出し、時系列的にその人の感情要素(「エネルギー」「熱意」「情緒」「不安」「ストレス」「思慮」「自信」「集中」など)を数値で出力することができることを、前回のコラムで説明しました。
これはそれなりに意義のあることなのですが、この感情出力をどのように使ってビジネスに活かすのかがわからないと宝の持ち腐れになってしまいます。
このコラムではそのやり方について解説したいと思います。

1. ALICeが対応するビジネスシーン

ALICeが対応するビジネスシーンは当社のホームページに記載してありますが、代表的なものを示します。

(1) コールセンター(応対品質の向上)

お客様の声から深層感情を解明し、お客様の不安、困惑、躊躇、不満などの感情に寄り添うことにより、応対品真の向上を図ります。
会話終了後には、応対内容のサマリと顧客反応に関する要点を簡潔にまとめ、的確な「取るべき行動」を示します。

(2) 採用(応募者の内面調査)

面接時の音声から感情パターンを解析し、対象者の真の性格と感情傾向を割り出します。
解析結果は対象者を評価する新しい切り口を提供しますので、人事部門の支援ツールとて活用できます。

(3) 営業(セールスの最適化)

セールスコールを最適化する営業部門の支援ツールです。
トップ営業マンの知見を組み込んだAIがあなたのセールスコールを解析し、セールスプロセスを最適化するアドバイスを行います。

(4) 不正申告の検出(信憑性の判断)

音声感情解析とテキスト分析を組み合わせて、電話をかけてきた人の意図と発言の信憑性を調査します。
保険金の申請時などに、不正申告の可能性を調査し、ピンポイントで疑わしい会話箇所を示します。

(5) マーケットリサーチ(顧客視点の深堀)

顧客との対面での会話や電話での応対により、顧客のキーとなる興味を特定して、マーケットリサーチと戦略策定を深堀します。

(6) 捜査支援(被疑者の心理分析)

取調べ時に、捜査官からの質問に被取調者がどのような感情反応を示すかをリアルタイムあるいはオフラインで表示します。
これによりどのような話題に被疑者が強く反応したかを知り、適切な質問を続けることができます。

2. ビジネスアドバイスの内容

多くの感情解析システムでは怒りや、喜び、ストレス、悲しみなどを数値やグラフで出力しますが、ビジネスおいて得られた結果をどのよう捉えて応対していくのかについては触れられていません。
しかし当社の提供するシステムは、一歩進んで感情解析の結果をどのように使うべきかについてアドバイスする機能を具備しました。
少し具体的に人事採用に例を取って、感情解析の結果を利用してどのようなアドバイスをするのかを簡単に説明します。
アドバイスではまず感情解析の結果から得られた事実関係をレポートします。
被験者のプロファイル(慎重的、積極的、論理的、感情的パーソナリティ等)を示し、質問に対する答えが建前的なのか本心を述べているかの程度を示します。
次に質問と回答の内容を感情変化と照らし合わせて、採用に当たって採用側にどのくらいのリスクがあるか、採用しようとする職種に適合しているか、どのような職種に向いているかあるいは向いていないか等をレポートします。
実際のビジネスアドバイスレポートの内容や形式は簡易的なものから、お客様との打ち合わせによりカストマイズしたものまでありますので、ご興味を頂けましたら当社までご連絡下さい。

3. ビジネスアドバイスのメカニズム

それではどのようなメカニズムでビジネスアドバイスレポートを出力するのかについて説明したいと思います。
当社の提携先であるイスラエルのEmotion Logic社は、これらのビジネスアドバイスを出力するクラウドシステムFeelGPTを開発しました。
当社はこのクラウド基盤を用いて日本のお客様に合うように調整したALICeクラウドサービスを提供しています。

まず上図を使ってFeelGPTの仕組みを説明します。
このクラウドに接続し、被験者の音声データを入力します。
このデータは前回説明したLVA感情解析システムにより解析され、この音声に含まれる様々な感情要素の時間的推移を約2秒毎に出力します。
さらに入力音声データはこのクラウド組み込まれている音声認識システムによりテキストデータに変換されます。
感情要素とテキストデータはFeelGPT生成AIに送られます。
このクラウドの中にはビジネスシーン毎に、感情とテキストのキーワードの時間推移との組み合わせにより、ビジネス活動の中でどのような挙動をしてきたのかのシナリオ知識ベースが大量に覚えこまされています。
FeelGPTに実際に入力された感情データとテキストデータとシナリオ知識ベースとを照合して、最適なビジネス挙動のシナリオを探し出します。
これをもとにビジネスアドバイス報告書を出力します。
ビジネスシナリオの知識データベースはEmotion Logicの親会社であるNemesysco社から供給されています。
同社は30年以上にわたり音声感情解析のパイオニアとして活動してきており、世界中の様々なビジネス適応例を経験してきました。
それらをシナリオにまとめ知識データベースとして保有しており、この知識ベースは日々更新、改善されています。

4. おわりに

Part1、Part2そして今回のPart3のコラムで、音声からから感情がわかるしくみを説明してきましたがご理解いただけたでしょうか?
当社はEmotion Logic社及びNemesysco社と緊密な連携を取りながら、日本のお客様のビジネス環境に合わせて機能や性能を調整したAliceソリューションとして提供しています。
これによりビジネス効率を図るとともに、ビジネスプラクティスの非属人化や標準化に寄与できますので、ご興味のある方は是非当社にご相談下さい。

音声感情解析AI「ALICe」とは