COLUMN

パーソナリティと分類手法について

パーソナリティ

はじめに

当社の提供するソリューションは、声から話者の感情をリアルタイムに検出するものですが、話者の感情の時間的推移を解析することでパーソナリティ(人格、性格)を判定することができます。
これにより、採用面接時の会話を解析して対象者の性格を推測し、採用したいパーソナリティを持つ人材かどうかを見極める資料を人事部門に提供しています。
パーソナリティの分類手法は古代ギリシャ時代からあり、ヒポクラテスの四体液説に代表されます。

「血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁」の四体液説と

「気・水・火・地」の四大元素との対応、
「熱・冷・湿・乾」の4つの基本性質の関係

現在世界的に有名なのがユング心理学に基づいたMTBI性格タイプで、E/I:外向型/内向型、S/N:感覚型/直観型、T/F:思考型/感情型、及びJ/P:判断型/認識型を基本分類として16種類の性格タイプに分類します。
日本ではリクルート社が開発したSPIテストを用いて性格分類をすることが多いようです。
また声からパーソナリティを32分類するシステムも市販されていて、コールセンターオペレーターと顧客の相性マッチングなどに使われています。
いずれにしても、パーソナリティを知ることは古代から現代まで私たちの関心を引いていたことは間違いありません。

そもそもパーソナリティとは一体何なのか?

パーソナリティを分類することは良く聞きますが、パーソナリティとは一体どういうものでしょうか?
Chat-GPTに聞いてみたら「その人が他の人と異なる独自の個性」と言う答えで、漠然としてしっくりきません。
そこで少し調べてみたら「Science Humaines(人間科学)」という雑誌に比較的わかりやすい説明が載っていましたので紹介したいと思います。

パーソナリティ特性(Personality trait)

1930年に米国の心理学者ゴードン・オールポート (Gordon William Allport) はパーソナリティ特性と言う概念を提唱しました。    

これはパーソナリティとは「どんな状況でもほとんど同じように行動する傾向」であるとする概念で、現代の心理学はこの概念を基礎にしています。 オールポートの提唱した概念に基づき、1950年代に米国の心理学者レイモンド・キャッテル(Raymond Cattell)やドイツの心理学者ハンス・アイゼンク(Hans J Eysenck) により「大きな人格特性(broad personality trait)」が提唱されました。 これは、個人の性格や特性を包括的に表現する大きな特性や傾向を指し、現在の人格モデルの基礎になっています。

パーソナリティモデル(人格モデル)

大きな人格特性を具体化したのがパーソナリティモデルで現在ではBig Five(5大人格特性)が広く受け入れられています。 また最近はニューロサイエンス(神経科学)に基づき、HEXACOモデルという補完的なモデルも提唱されています。

(1) Big Five モデル(5大人格モデル)

1980年代に米国の心理学者ロバート・マクレー (Robert McCrae) とポール・コスタ (Paul Costa) により提唱された人格モデル、で個人の性格を以下の5つの基本的な要因または特性に分類します。                   これらの特性は、人々が異なる行動や反応を示す傾向があることを説明するために使用されます。

① 開放性(Openness)

② 誠実性(Conscientiousness)

③ 外向性(Extraversion)

④ 協調性(Agreeableness)

⑤ 感情の安定性(NeuroticismまたはEmotional Stability)

(2) HEXACOモデル

HEXACOモデルは、ニューロサイエンス(神経科学)に基づき、Big five モデルに「誠実さ-謙虚さ」という要素を1つ追加し6つのパーソナリティ要素からなるモデルです。HEXACOという言葉はそれぞれの要因を示す6つの英単語の頭文字に由来しています。2000年代に米国の精神科医であるロバート・クロニンガー (Rpbert Croninger) や心理学者のマービン・ズッカーマンにより別々に提唱されたものです。

以下に、HEXACOモデルの6つの要因とその説明を示します:

① Honesty-Humility(誠実さ-謙虚さ)

他人に対する態度や行動において、誠実さや謙虚さの程度を表します。 高いスコアの人は、正直で謙虚な傾向があります。

② Emotionality(感情的安定性)

感情の安定性や不安定性を示す要因であり、感情の揺れやすさを反映します。 高いスコアの人は、感情の安定性を示し、冷静で穏やかな傾向があります。

③ extraversion(外向性)

社交性や活発さ、エネルギッシュさを示す要因です。 高いスコアの人は、社交的で冒険心があり、活動的な傾向があります。

④ Agreeableness(協調性)

他人との協調や優しさ、思いやりの程度を示します。 高いスコアの人は、寛大で他人との関係を重視する傾向があります。

⑤ Conscientiousness(誠実性)

責任感や自己管理能力、秩序感などを示す要因です。 高いスコアの人は、計画的で責任感が強く、自己管理能力が高い傾向があります。

⑥ Openness to Experience(経験への開放性)

新しい経験やアイデアへのオープンさや創造性を示します。 高いスコアの人は、柔軟性があり、新しいものに対して好奇心が旺盛な傾向があります。

このモデルは、人々の行動や意思決定に影響を与える要因が何かを把握するために広く利用されています。 パーソナリティモデルを使って、対象者の面接時の性格分類が分かったとして、次の疑問に答えられなければ、採用などの実用的な場面では使えません。

  • パーソナリティは一生を通じて変化するか?
  • パーソナリティを決める要因は何か?(生まれつき、教育、経験、などの何が支配的か?
  • パーソナリティは私たちの人生や職業にどのような影響を与えるのか?

次回のコラムではこれらについて説明します。