COLUMN

No.10 政府公表「AI事業者ガイドライン」に対する当社の対応について

マーケット

はじめに

本年3月に欧州議会がAI規制法を可決し施行されましが、わが国では本年(令和6年)4月に総務省と経産省の連名で「AI事業者ガイドライン」第一版が公表されました。
この文書はEUのAI規制法(※1)とは異なり、法律ではないので法的な強制力はありませんが、「AIの安全安心な活用が促進されるよう、我が国におけるAIガバナンスの統一的な指針を示す」為に発行されました。
当社はもちろんこのガイドラインに従い事業運営を行っていきます。
本コラムではこのガイドラインの要点を解説し、当社の対応方針について記載しております。
ご一読をいただき事業運営方針をご理解頂ければ幸いです。

※1 「EUのAI規制法」については2024年4月15日の当社コラムをご一読ください。

AI事業者ガイドライン発行の意図

日本政府は日本の産業競争力強化のため、従来からSociety 5.0として、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによる、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会というコンセプトを掲げてきました。
この背中を押すように、最近はAI技術の進展により、対話型生成AIが広がり、企業や個人がAIを容易に活用できるようになりました。
しかし一方で新たな社会的リスクも増大しています。
AIのリスクを正しく認識し、必要な対策をAI関連事業者や個人が実行できる枠組みが必要とされています。
このため、これを行うガイドラインとして「AI事業者ガイドライン」が2024年4月に総務省・経産省共同で発行されました。
これにより、イノベーション促進とリスク緩和を両立させることを目指しています。
また、日本政府としてG7やOECDなどでの議論をリードすることも念頭に置いているようです。

ガイドライン文書の要約

ガイドラインそのものは以下のURLからダウンロードすることができます。

経済産業省HP

総務省HP

1. ガイドラインの目的と背景

AI技術は急速に発展し、産業や社会の多くの分野で利用されるようになっています。
しかし、その利用拡大に伴い、知的財産権の侵害や偽情報の生成など、新たなリスクも増大しています。
これを踏まえ、AIの安全で信頼性のある利用を確保するための指針を提供することがこのガイドラインの目的です。

2. 基本理念

ガイドラインは、AIの利用がもたらす社会的な影響を考慮し、人間中心の社会の実現を目指しています。
具体的には、人間の尊厳、多様性の尊重、持続可能な社会の実現を基本理念としています。

3. 原則と共通の指針

AIを開発・提供・利用する各主体は、以下の原則に基づき活動を行うことが求められます。

  • 人間中心          : AIが人間の尊厳を侵さないことを確保する。
  • 安全性           : AIが安全に利用されるようリスク管理を徹底する。
  • 公平性           : AIの利用において不当な差別や偏見が生じないようにする。
  • プライバシー保護      : AIによる個人情報の取り扱いを適切に行う。 
  • 透明性とアカウンタビリティ : AIの動作やその影響について説明責任を果たす。

4. AIガバナンスの構築

AIのリスク管理を行うため、ガイドラインは「リスクベースアプローチ」を採用しています。
これは、AIの利用に伴うリスクを予測し、それに応じた対策を講じるアプローチです。
また、AIのガバナンスを継続的に改善するために、関係者が連携し、AIの安全性を向上させる仕組みの構築が推奨されています。

5. 各主体の役割

ガイドラインでは、

  • AI開発者
  • AI提供者
  • AI利用者

のそれぞれに対して、AIの安全で信頼性のある利用に向けた具体的な取り組みが求められています。
これには、AIシステムの適正な利用、リスクに対するモニタリング、そして透明性の確保が含まれます。
このガイドラインは、AI技術の急速な進展に対応しつつ、社会全体でのAIの安全な利用を促進するための重要な指針となっています。

当社事業とAI事業者ガイドラインの関係

当社の事業内容は、技術提携先であるNemesysco社とそのグループ会社であるEmotion Logic社が開発した感情解析サービス(クラウドで提供)を日本のお客様のご要望に合わせて、クラウドを動かす設定値を具体的に決め、必要であれば提携先に機能の追加を依頼してお客様の状況に合わせた感情解析サービスを提供することです。
この中でAIの使用は限定的で、感情解析はAIを使わずに行い、解析結果に基づいたビジネスアドバイスを出力するときに、既存の生成AIを補助的に用いて過去の事例を参照するものです。
従って当社の本ガイドライン上での立ち位置は、

  • AI提供者 及び AI利用者

と位置づけられます。

AI提供者と利用者が遵守すべき指針

AI事業者ガイドラインの中で述べられている指針は、共通指針、開発者向け指針、提供者向け指針、利用者向け指針となっています。
この中で開発者向け指針を除く指針は、ガイドラインに詳細に記載されていますが、大胆に要約すると表1になります。

当社の対応方針

AI事業者ガイドラインへの対応ですが、当社はこのガイドラインを尊重し、できる限り遵守いたします。
個別のお客様とは必要に応じて、契約時に詳細にこのガイドラインの具体的な遵守方法を説明させて頂きます。
また当社の技術提携先であるNemesysco社及び Emotion Logic社と情報を共有し、適切に対応するように適宜両社に要請しております。
また、当社のAIの提供方法は、ビジネスアプローチをアドバイスするときに、生成AIを補助的に用いて過去の事例を参照するものですので、AIがお客様の重要な意思決定にかかわることはありません。
しかし当社は基本的にリスクベースアプローチを採用し、AIを使う際にお客様の潜在的なリスクを予測し、事前にリスクを軽減するための方策をアドバイスさせて頂いております。
この際にAI事業者ガイドラインを活用する方針としております。
ご理解をいただければ幸甚です。

音声感情解析AI「ALICe」とは