はじめに
メキシコシティに「ボザナリシス」と言う会社があります。
スペイン語で’Voz Análisis’、直訳すると「音声解析」と言うそのものズバリの社名です。
この会社はLVAテクノロジーを用いて、顧客企業の従業員の人事リスクを評価するサービスを提供しています。
人事リスクは日本ではまだあまりなじみのない概念ですが、要するに従業員が犯罪をするリスクの事を指します。
このリスクを音声感情解析テクノロジーであぶり出し、信頼性の高い事業運営に貢献するのがボザナリシス社の役割です。
日本でもグローバル化は避けて通れません。
数年後には人事リスクを真剣に考えなければならない社会が到来するでしょう。
犯罪多発国のメキシコの事例を参考に紹介したいと思います。
海外の人事リスク認識について
日本ではあまりありませんが、海外の高級住宅地の一部では敷地の周囲に高い塀やフェンスを設置して不正侵入を防ぎ、24時間体制で警備員が常駐し、敷地内外の巡回を行います。
そして、住民や許可された訪問者のみが入場できるようにゲートやバリアを設置し、入退場を管理しています。
メキシコ、ブラジル、南アフリカ、などグローバルサウスの国々に比較的多いようです。
メキシコシティのボスケス・デ・ラス・ロマス地区にある「クラブ・デ・ボスケス」と言うゴルフ場付きの高級住宅地も敷地の周囲を高い塀で囲みセキュリティ対策をしていますが、当社の提携先であるEmotion Logic社の製品担当役員であるG.Olevson氏によると、さらなるセキュリティを守る活動の一環としてLVAテクノロジーが使われているそうです。
ゴルフ場付き高級住宅地‘De Bosques’
高級ゴルフ場と付属する高級住宅地のセキュリティを守る活動は、その資産価値を担保する重要な活動ですので、このゴルフ場のマネージャーは考えられるありとあらゆるテクノロジーを用いてセキュリティを確保する対応をしているのですが、最後にはこのゴルフ場と住宅地で働く従業員が犯罪を冒すリスクを最小限にする対応が大切だと認識したそうです。
このコミュニティを支える為に数百人規模のさまざまな従業員が雇用されています。
管理者などの幹部職員から、オフィススタッフ、警備員、保守作業者、運転手、庭師、ウエイター・ウエイトレス、ゴルフのキャディ、など企業として契約しているスタッフ以外に、住人が独自に契約しているゴルフキャディやインストラクターなど、実にさまざまな人々が関わっています。
実はこれらの従業員が関与した犯罪、例えば外部の犯罪集団への機密情報や富裕層の個人情報のリーク、内部横領、小規模な窃盗、などが起こっており従業員による犯罪を防ぐ対策が大きな課題になっていました。
日本では従業員は犯罪をしないだろうという性善説に基づいて何となく形式的に人事リスク低減措置をしているような気がしますが、他国では全く異なります。
クラブ・デ・ボスケスでは内部の職員による犯罪があるという性悪説に基づいて、堅牢な内部統制、従業員の監視、データアクセス制限を組み合わせた多層的なセキュリティ対策を導入しています。
また、責任感と警戒心を高める職場文化を育み、従業員の疑わしい活動を特定し報告できるようにして人事リスクの低減を図っています。
しかし、人間の心は移ろいやすいものですし、今日の善人でも魔が差して一時的に悪人になってしまうこともあり、人事リスクを低減するには一般的な内部統制対策だけでは不十分であるとクラブ・デ・ボスケスの経営幹部は感じていました。
そこで、さまざまな犯罪行為に関連する危険信号を迅速に検知できる、効率的で柔軟かつ費用対効果の高いソリューションを見つけることが幹部らの大きな課題でした。
そこで幹部は「ボザナリシス(Voz Análisis)」と言う人事リスク評価サービスを提供しているコンサル会社に相談しました。
そのような会社があること自体が日本ではなじみはないのですが、同社は、音声感情解析テクノロジー「LVA-i(当社が提携しているイスラエルのNemesysco社が開発した音声感情解析ソフト)」を活用し、従業員の誠実性やリスクレベルを評価することに特化している会社で、次のようなサービスを提供しています。
ボザナリシス社の提供サービス
- 採用時のリスク評価:
音声感情解析テクノロジーを用いて、候補者の誠実性やリスク要因を評価し、企業の採用プロセスを支援します。 -
内部調査支援:
従業員が関与する可能性のある不正行為(例:盗難、詐欺、情報の不正使用)に対する調査をサポートします。 -
従業員の忠誠度と誠実性の評価:
在職中の従業員の行動を評価し、忠誠心や誠実性、依存症のリスクなどを測定します。 -
昇進候補者の評価:
内部昇進候補者の能力や適性を評価し、適切な人材配置を支援します。 -
労働環境の評価:
従業員のストレスレベルや職場環境に関する評価を行い、労働条件の改善に役立てます。
これらのサービスを提供するために、ボザナリシス社は音声感情解ソフトとしてLVA-iを選んだのですが、これを選んだ理由は、LVA-iが話者の話し方やイントネーション、言葉の選択に影響されずに話者の本当の感情(心のうち)を検出できることにあります。
またLVA-iは大きなサーバーを使用するわけでは無く、PCで手軽に使え、結果もすぐに表示される手軽さも決め手になったとのことです。
ボザナリシス社とLVAテクノロジー
クラブ・デ・ボスケスの経営幹部はボザナリシス社の専門家と協議を重ね、まず従業員へのアンケートを作成しました。
これは、組織犯罪への関与、窃盗やその他の犯罪への関与、贈収賄、職場における薬物やアルコールの乱用、機密情報の意図的な漏洩など、さまざまな望ましくない活動への関与の兆候を検出するために作成されました。
このアンケートはPCアプリとしてインストールされ、従業員はPCのスクリーン上に示される質問に対して声で答え録音されます。
アンケートは10分から15分程度で、録音された音声は音声感情解析ソフトLVA-iにより解析されリスク・レポートが自動的に作成されます。
さらに、LVA-iのリアルタイムモードを使用して対面インタビューも行いました。
インタビュアーが従業員に一連の質問を行い、インタビュー中の感情やリスクの兆候を観察しました。
このインタビューは威圧的にならないように細心の注意を払って行われたそうです。
上述のアンケートとインタビューは管理職からオフィススタッフ、警備員、メンテナンス作業員、運転手、造園業者、ウェイター、ゴルフキャディ、その他のサポートスタッフまで、さまざまな部門にわたる500人弱の従業員が対象となり、実施されました。
この結果、25人の従業員が、さまざまな犯罪行為に関与している可能性があると指摘されました。
少規模の窃盗が最も多く、次に守秘義務違反、犯罪者への情報リークが認められました。
疑いのある従業員は2回目の面談を受け、セキュリティの専門家がさらに調査を行いました。
この結果、疑いのある大半の従業員が犯罪に関わっていることが確認され解雇されました。
中には居住者のひとりが個人的に雇っていたゴルフのキャディが、強盗、贈収賄、薬物乱用など、重大な犯罪行為に関与している可能性が高いことが検知されたこともありました。
これらの対応により「羊の皮をかぶったオオカミ」を発見できましが、それ以上の成果をあげたことに注目する必要があります。
この活動は、クラブ・デ・ボスケスとその住民たちが、従業員に対する信頼を再確認するのにも役立ち、より良い安心感につながったことです。
その後、クラブ・デ・ボスケスでは、社内にLVA-iインタビュアーを任命し、経営陣や時には居住者自身から依頼された自動インタビューを実施しています。
LVA-iの導入により、クラブ・デ・ボスケスは、居住者、ゲスト、施設をより確実に保護することができ、大勢のスタッフが信頼でき、この高級住宅地の管理を任せられるようになりました。
おわりに
日本ではまだ安全神話が何となく信じられており、性善説に基づく犯罪防止対策が形式的に行われているような気がします。
しかし、昨今の闇バイトによる連続強盗殺人事件の発生など危険が身に迫って来ています。
また経産省の外郭団体によると、日本では企業や団体の内部不正リスクを重要な経営上の課題と捉えている企業は40%にとどまり、対策が十分ではありません。
音声感情解析テクノロジーにご興味のある方は弊社にお問合せ頂ければ幸いです。